佐谷 秀行

JKiC産学医連携部門長

使命は良い産物を社会に届けることと、
ユニークな人材育成

JKiCは、慶應義塾大学医学部や病院の医師および研究者が持っている能力やシーズと、ライフサイエンスに今後注力していこうとしているJSR株式会社という企業が出会い、協働する場です。

この連携の最終的な目標は、社会に良い産物をお届けすることと、ユニークな人材育成であり、そのためのあらゆる支援を舞台裏で行うのが産学医連携部門の任務であると考えています。

企業はアカデミアと組むことによって、非常にユニークな人材を育成することができますし、アカデミアは企業と連携することで、いままでのアカデミアが持っていない発想を持つ人材を育成できると思います。

製薬会社や生物系の企業の研究者は、ある意味、医学の研究者とメンタリティが近い部分があります。しかし、これまで化学素材の研究をしてきたJSR株式会社は、医学研究者とはメンタリティがかけ離れています。その両者の調節は難しい点でもありますが、いままでにない化学反応が起こる可能性があり、そこに大きな期待を寄せています。

大学ではややもすると、名人芸のような、個人の技量に依存した研究や治療が行われてきました。一子相伝のような形で伝えられることもあります。しかし、マニュアル化して、きちんと引き継いだり、標準化していったりすることが重要だと考えられるようになってきました。企業の品質管理技術など、学ぶべき点がたくさんあります。

逆に企業側は、個性が強い研究者の考えも受け付けていくことで、新たな学びがあると思います。 ただ、そのためには、良い協働体制が必要です。上から「こういうものを作ってほしい」というトップダウン型ではうまくいきません。現場からの「これをやりたい」という声を取りまとめていくのが、リーダーの役割です。

ミーティングは成果報告会になってしまうと、成果主義に陥ります。せっかく異なる文化が出会う場ですから、ミーティングでは現在困っている問題を提出して、文化の異なる視点からの意見をもらい、解決していきたいと思います。問題解決の場にしていくことで、これまでにない成果を生み出していきたいものです。

研究を進めていくにあたり、研究者側で作りこんでから、企業側に実用化してもらうのではなく、萌芽的なところから、企業に参加してもらい、芽から一緒に育て、成果として共有していくことが大切です。それにより、社会に良い産物をお届けしたいと思います。