佐谷 秀行

Precision Medicine 領域リーダー

新たなる産学連携体制で、新たなる「精密医療」を追及

従来の、平均的な患者向けの医療の限界から、近年注目を浴びているのが、personalized medicine(個別化医療)です。しかし、一人一人の患者に合わせた治療は理想ではありますが、現実的には難しい面があります。そこで出てきたのが両者の中間のPrecision Medicin(精密医療)です。患者を一定のサブグループ群に分けて、それぞれに適した治療を行おうとしています。

これまでのサブグループ分けは、ゲノムの配列のみで行われてきました。しかし、プロテオミクスの解析や腸内細菌のパターンなど、あらゆるデータを取り込んでサブグループ分けする時代が来ます。慶應義塾大学はオミックス解析やバイオロジーにきわめて強く、私たちはもっと幅広いビッグデータを用いて行う、次の世代のpersonalized medicineを目指します。

多くの場合、基礎の研究者は知的好奇心を推進力として研究を行っています。応用に目を向けすぎても、サイエンスの真価が損なわれる危険がありますが、社会に成果を提供することも、やはり頭に置いておくべきです。

JSR株式会社と協働していくことで、実装したときにどうなるかという考えが、研究者の中に芽生えることは、意義が大きいと思います。

ここでの成果物は、人の健康に関わりますので、社会に安全で効果的なものを提供していかなければなりません。そこを重視すれば、ときにはうまくいかないものは捨てる必要もあります。しかし、それがときにスピンアウトして、別の形で役立つものになることもあります。そういった判断をしていきたいです。

いままで日本にない、産学連携体制の新しい姿を見せたいと思っています。アメリカには多くある、キャンパスの中に企業が建てた研究所で協業するという形を、他の大学が真似したいと思うようなものにしたいですね。