小柴 満信

JSR株式会社 取締役会長

JKiCを本物のオープンイノベーションの場に

JSR株式会社はライフサイエンス関連事業を第3の柱として位置付けました。JSR株式会社の優れた材料・品質技術、そしてグローバルに事業を展開する組織能力を、ライフサイエンス分野に展開していきます。そのために従来の差別化材料を基軸においた材料事業を超えて、バイオ医薬製造に欠かせない製造技術および分析技術を有するKBI Biopharma社(米国ノースカロライナ州およびコロラド州)とSelexis社(スイス ジュネーブ)に戦略投資をしました。また、幅広い診断薬技術を持つだけでなく、優れた抗体作成技術を有する医学生物学研究所(名古屋および伊那)にも戦略投資を行い、グループ企業化しました。これらはすべて当社がライフサイエンス事業をグローバルに展開する媒体と位置付けています。

JKiCはJSR株式会社のライフサイエンス関連事業のパイプライン(新技術の弾込め)を担う研究所になって欲しいと思っています。どんな事業でも事業を支える探索研究や基礎研究が必要です。言うまでもないことですが、こういった日々の努力を怠ると、技術が枯渇し、最終的にはその事業の競争力が失われます。ライフサイエンス分野は日々新しい発見が行われ、進歩している分野です。その中で慶應義塾大学の医学部と病院は、世界でも最先端の研究を行い、高い実績を上げています。この日本の宝ともいえる技術の宝庫を、JKiCを通じて「価値」、すなわち「イノベーション」に昇華させるのがJSR株式会社の役目でもあり、慶應義塾大学からの期待でもあります。

オープンイノベーションは色々なところで語られますが、本当に実践できているところはほとんどありません。JKiCに期待することは真のオープンイノベーションの体現です。JKiCを、当社と慶應義塾大学医学部と病院だけの閉じられた研究所にするつもりはありません。慶應義塾大学の素晴らしい技術をイノベーションに昇華させるためには、第三者の介在も必要となるでしょう。場合によっては、その第三者は当社の競合メーカーかもしれません。しかし、より大きな成果を上げるために、第三者との連携にも積極的に取り組みます。また、JKiCは地上3階、地下1階の建物ですが、1階は学生や協業相手の他企業にも積極的に開放していきます。JKiCで行うテーマについて、グローバルな専門家を集めて諮問機関を作り、進捗を管理し、適切な助言を得ていきます。

日本に限らず、先進国が老齢化社会を迎える中で、Quality of Lifeという言葉が良く聞かれます。JKiCがその技術とイノベーションでQOLの維持向上に役立ち、オープンイノベーションを実践し、世界で注目され、羨まれる研究機関となるように、当社はその運営に精一杯努力していこうと考えています。